architecture
グランキューブ大阪の建築を見る
建築家 黒川紀章が建てた グランキューブ大阪
世界の関心を集める国際会議や華やかなイベント、熱気あふれるコンサートなど様々な催事が今日も開催されているグランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)。
この建築物は、世界的な建築家 黒川紀章氏が設計したものです。
グランキューブ大阪の建築について、建築史を研究されている大阪公立大学・大学院工学研究科の倉方俊輔教授にお話ししていただきました。
「グランキューブ」という思想。
2000年に開館した大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)は「紀章らしさ」の宝箱です。1934年に生まれ、世界で有名な建築家として2007年にこの世を去った黒川紀章の面白さが、大きな箱にギュッと詰まっています。
全体の形は、まさに愛称通りの「グランキューブ」(大きな立方体)。多くの人に訴える分かりやすさをつくる才能に、紀章は若い頃から秀でていました。近づいてみましょう。エスカレーターや構造体がどこにあるかが分かってきます。川沿いの道路から樹木に誘われて歩くうちに、身体はもう地上から高く持ち上げられた建物の下に。仕組みが明快で、足元も昔の建物のように重く閉じられていません。近代的な技術を駆使して、人間の思い思いの動きをなるべく自由にしようと努めています。中に入って感じられるのは、外から見るよりさらに大きな空間。イベントホールは内部に柱がなく、屋外のような開放感です。メインホールは席数の多さに驚きます。さらに2つのホールに分割できる技術にびっくり。会議室は大小さまざまに準備され、利用方法を限定しません。そして、円形の特別会議室はいつかの未来に見た、世界の人々が真に協力し合う「国際」会議場そのものみたいです。
次々と現れる形も、お宝です。屋上の赤く塗られたオブジェは、これぞアンテナというイメージ。これ見よがしな窓ガラスの構造体や居並ぶエスカレーターも、今となっては懐かしい機械時代の雰囲気が漂います。では、ギザギザした手すりは?これは紀章がある時期、単純な機械時代を乗り超える存在だと力説したフラクタル図形に由来しています。ロビーの椅子や机も紀章の設計、江戸時代のデザインも彼の手にかかれば自由自在なのです。
建築家 黒川紀章(くろかわ きしょう)
建築家 黒川紀章(くろかわ きしょう)
1934年 愛知県蟹江町生まれ。 京都大学建築学科(1957年)を経て東京大学大学院博士課程所定単位修得(1964年)。 日本芸術院会員、日本景観学会会長、日本建築学会終身会員、ブルガリア建築家協会名誉会員、 英国王立芸術協会終身会員、英国王立建築家協会名誉会員、(1986-2005年)、英国王立建築家協会国際フェロー(2006年)、フランス政府公認建築家(No.36653)、(フランス建築家協会正会員)、米国建築家協会名誉会員、ドイツ建築家協会名誉会員 カザフスタン建築家協会名誉会員、カザフスタン共和国首相顧問(2000-2004年)、ロシア科学アカデミー外国人会員、中国深圳市都市計画顧問(1999-2002年)、 中国広州市政府顧問(2000-2002年)、河南省省都都市計画委員会高級顧問(2000〜)、中国焦作市政府顧問(2001〜)、昆明市人民政府顧問(2002〜)。
黒川紀章が60年前より提唱してきた「共生の思想」は、来るべき生命の時代の基本となる思想であり、21世紀の世界の新秩序として建築界ばかりでなく、財界や他の分野にも大きな影響を与え、いまや時代のキーワードとなっている。
(主な作品)
大阪公立大学大学院工学研究科教授 倉方俊輔
大阪公立大学大学院工学研究科教授 倉方俊輔
建築史家、大阪公立大学大学院工学研究科教授。日本の近現代の建築を研究するとともに、建築公開イベント「東京建築祭」の実行委員長、「イケフェス大阪」「京都モダン建築祭」の実行委員を務めるなど、建築の価値を社会に広く伝える活動を行っている。『生きた建築 大阪』『東京モダン建築さんぽ』など著書多数。